One Day As A Lion One Day As A Lion
01 Wild International
02 Ocean View
03 Last Letter
04 If You Fear Dying
05 One Day As A Lion
スタジオ・ミュージシャンとしてのZack de la Rocha

私は無類のリフのフェチであり、鼻歌でもリフしか刻むことはない。リフ主体のロック以外のCDを買うことはほとんどなく、あくまでリフを提供してくれる対価としてCDに金を支払う。そのリフのエンゲル係数の高さはかなりのものであり、自他共に認めるリフ尽なまでに趣向の狭いロック・ファンである。

私がRage Against the Machineに魅了された理由は、徹頭徹尾ユニゾンのリフで演奏武装された曲展開にあったため、Audioslaveの1stがリリースされた時もリフ自体に変わりがなかったことから、私は違和感も幻滅もなく受け入れることができた。

Rage Against the Machineのライブでは圧倒的なカリスマを発揮させるZack de la Rochaであるが、CDというスタジオ音源を聞いている限り、彼の音楽的な貢献度はただ「その強靭な声で、リフの破壊力を助長させてくれること」という認識だった。そのため彼をRage Against the Machineの音楽の中心的存在と考えるファンから見れば、自分の中でのZack de la Rochaの「音作り」への評価は低いのかもしれない。
さらに、これまでに発表されたソロ曲である”March of Death”、”We Want It All”を聞く限り、Rage Against the Machineのリフを奪われた彼からは、個人的には貝殻を失ったナメクジ程度の攻撃性しか受け取ることができず、その後音源の発表もないままRage Against the Machineの再結成を迎えたため、「はたして彼ひとりで何ができるのか」「はたして彼の音楽的な才能はどれほどのものなのか」という疑問を残したままとなっていた。

そこに突如としてリリースされたのが、元Mars Voltaの敏腕ドラマー、Jon Theodoreとのコラボで噂されていたプロジェクト「One Day As a Lion」のEPである。
まずは、発売前の情報であるプロジェクト側のコメント(以下)を思い出してみることにする。
「キック・ドラムとスネア・ドラムの間の空間に存在する可能性を、大胆に肯定した作品だ。絵画のように組み立てられた文化的景観(または人間と自然との相互作用によって生み出された景観)と、表面に出てこない社会経済の残忍な現実との間に存在する、本能的な緊張状態を“音”で表現した。(訳:BARKS)」

早速CDをかけてみると、この言葉が意味するとおり、強弱をつけた変則的でジャジーなドラムに、もはやギターにしか聞こえない歪みまくったキーボードのリフが乗っかるという、空間の多いシンプルな構成である。ベース音すらない曲がほとんどで、それが余計に” キック・ドラムとスネア・ドラムの間の空間に存在する可能性”を浮き彫りにする。
その通り、場の主役となることの多いJon Theodoreのドラムが圧倒的に凄まじい。 Mars Volta時代は、技巧派とセンス派の両方を併せ持つ才能を見せ付けてくれたものだが、このEPではセンス派に終始徹しているといっていい。チープで小さなドラムキットをBonzoのような音圧で変則に殴りつける。
一方で、時おりパンクやレゲエ調の曲にメロディをのせて歌うZack de la Rochaのボーカルスタイルに驚きを感じるが、過去のキャリアから背伸びをしたものではなく、基本的にはRage Against the Machine時代の延長上にある。ただ明らかに違うのは、分厚い演奏にのせてたたみかけるようなシャウトはなく、空間をあけて言葉を発していることだ。そのため、場を支配する「ひとつの楽器」、「ひとつの声」に責任が強く与えられることになり、確かに” 本能的な緊張状態”がスリリングに表現されている。
また、Mars Voltaの体験要素をJon Theodoreが持ち込んだのかは不明だが、悲しみや哀愁を感じさせる高音のシンセ音が、このシンプルな音構成の上で確かに”絵画のように”散りばめられる。その悲しい高音が歪んだ音と組み合わさることで、逆に緊張した高度な怒りを発しているように聞こえてくる。

まったく新しい音楽ということもできるが、このシンプルな構成から、ラップとパンクのミクスチャーの元祖とはこういう音だったのではないか、と思いを巡らせることもできる。それはつまり、Zack de la Rochaの音楽ルーツがはじめて音楽としてリリースされたのではないかと。

Rage Against the Machineとは違い、One Day As a Lionのシンプルな音楽では、彼もライブで圧倒的なカリスマ性を発揮することはできないだろう。ライブで2人だけで再現するとすれば困難な音楽であるし、”Kick out the Jams”ほど簡単な曲で音程を外す歌唱力のZack de la Rochaが、これらをライブで歌うとなればかなり心配である。
しかし、ライブ活動への欲求はRage Against the Machineの再結成活動で満たされているだろう。このOne Day As a Lionで見せた成果は、Zack de la Rochaがスタジオ活動で自身の音楽力の高さを証明してくれたことにあるのではないかと思う。何より、過去のRage Against the Machineの「All Sounds Made By Guitar, Bass, Drums and Vocals」という体育会系のスローガンが、彼の表現力の制限となっていたのではないかと。何より、Rage Against the Machine時代のお約束のギターソロもリフの溜めもなく、シンプルでありながら自由な楽器と自由なアイデアがOne Day As a Lionには凝縮されている。

しかし、このEPで見せてくれたZack de la Rochaの新たな才能を、One Day As a Lionの今後の活動 に注ぐのではなく、3rd以降マンネリ化しているRage Against the Machineへの新境地、そして第二章の幕開けに注いでくれればと切に願ってしまうのはファンの独りよがりだろうか。
それより以前に、「リフ、リフ、ギターソロ、絶叫」、こういったガチガチの型にハマった趣向だけをRage Against the Machineに要求し続けてきた自分のようなファンの存在が、彼らのマンネリ化を招いた大きな要因だったのかもしれない。”リフ”ではなく”音楽”を聴こう。そう気付かせてくれた1枚だった。


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key-k.com(ケヅメリクガメ) 2009年1月7日



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