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2003年の12月に待望の「Live at the Grand Olympic Auditorium」が発表された余韻もあり、2004年はファンには非常に明るいスタートを切った。当時で発売から既に1年以上が経っていたAudioslaveの1stアルバムもまだ全米50位代に居座り、日本でもロッキングオン誌の"2004年ロック大予想"なる特集でZack de la Rochaが巻頭で大きく扱われているなど、Rage Against the Machineが解散したことを忘れてしまうほど、輝かしい1年を期待したものだった。
しかしその後は、3月に「Audioslaveの新作用に既に20〜25曲ほどの新曲を書き終えている」という声明があって以降、上半期はぱたっと動きが鎮静化してしまう。結局、コンスタントに活動の情報が流れてくるのはTom Morelloのみで、彼はNightwatchman名義のオフィシャル・サイトを立ち上げ、TACO BELL社へのストライキ支援ライブやメーデー・ライブの敢行のほか、ANTI-FLAGのアルバムのプロデュースを担当するなど、「Audioslave」や「Zack de la Rocha」とはまた異なる「Nightwatchman」としてのアイデンティティと存在感を着実に確立していった。
余談だが、「Live at the Grand Olympic Auditorium」発売以降のRage Against the Machine再燃の波に乗ってか、”guerrillaradio.net”なる貴重なライブ・ブートレグ音源が落とし放題の個人サイトが6月にオープンした。案の定、世界中のファン・ボードの話題をさらうこととなり、1ヶ月で数万のアクセスを集めていたが、そもそもが違法ということもあるせいかアクセスのできない日が何週間と続くこともあるような不安定なサイトであった。しかし、このサイトのおかげで、未だに世界中にRage Against the Machineファンが根強く、そして数多く潜んでいることが実証されたことは間違いない。
下半期のスタートは、Brad WilkがToolのMaynard James Keenanとともに「Sleeping Dogs Lie」というミステリー映画に出演するというニュース(その映画の放映については未確認)や、トム・クルーズ主演映画「コラテラル」の主題歌にAudioslaveの” SHADOW ON THE SUN" が起用されるといった、華やかな話題が目立った。特に「コラテラル」の件では、ここ日本でもそのCMソングで” SHADOW ON THE SUN"が使われたため、お茶の間でChris Cornellの咆哮が聞けるというギャップを体験したコア・ファンも多いのではないだろうか。(当サイトにも、CMで使用されている曲に関するお問い合わせメールを数通お寄せいただき、日本でもAudioslaveが少しでも盛り上がってくれるようにという願いを込めて、ついつい熱すぎる返信メールを送ってしまったのを記憶している。)
しかし、Audioslave / Zack de la Rocha周辺が本格的に動き始めるのは、やはりブッシュ再選の可能性も残るアメリカ大統領選挙戦の時であった。8月に、口火を切ってNightwatchmanがANTI-FLAGらとともに「ROCK AGAINST THE BUSH」と題された全米ツアーに参加することを表明した。
そして9月には、かつて”Sleep now in the fire”のPV監督も務めたマイケル・ムーアが、自身の大ヒット映画「華氏911」のテーマアルバム(邦題「触発『華氏911』」)の発売を、10月5日予定で進めているという記事がNew York Times誌に掲載され、何とその記事の筆頭には、Zack de la Rochaの新曲が含まれるという驚くべき内容が記されていたのである。Bruce SpringsteenやBob DylanやPearl Jamといった豪華な面々の楽曲が収録される同アルバムだが、やはり話題の中心はZack de la Rochaの新曲に集中し、アルバムの雑誌広告もZackのモノクロ顔写真が背景に敷かれているものであった。そして数日後には、その新曲が"We Want it All"と題されており、プロデュースは何と決別が噂されていたTrent Reznorが担当していることが報じられた。急な出来事であったのにも関わらず、日本でもクロスビート誌・ロッキングオン誌・SNOOZER誌で、それぞれヘッドラインにZack de la Rocha新曲に関する記事が差し込まれ、CDも無事に10月6日にリリースされた。しかし問題の新曲は、ストレートなパンクに乗せてZackがひたすらメッセージをシャウトをするというシンプルなもので、彼のメッセージ性を評価してきた日本のマスコミの間では賞賛されたが、音楽性の高さを求めていたファンの間では、シンプルというより単調としか聴こえなくもないこの曲に落胆する声が多かった。私個人的な感想としても、あまりにシンプルすぎてZack de la Rochaならではの楽曲の個性を発見することが出来ず、そのまま4-3=1の”身ぐるみを剥がされたRage Against the Machine”という印象であり、Zackの声以外には魅力的な要素はなかったため、何度も聴けるものではなかった。なお、同アルバムにはNightwatchmanもソロ曲”No One Left”を提供しており、Bob Dylan直系のフォーク・ソングを歌っているのも見逃せない。”Daywatchman”ことエレクトリック・ギター・ヒーローとしてのTom Morelloとは正反対の彼らしさが楽しめる。
また11月には、Tom MorelloとSystem of a DownのSerj Tankianの主導で、“Axis of Justice”のコンサートの模様を収録しているCD+DVD「Axis Of Justice Concert Series Volume 1」(邦題「正義の枢軸 コンサート・シリーズ VOL.1」)の発売が決定した。参加メンバーはTom MorelloとSerj Tankianは言うまでもなく、AudioslaveからはChris Cornell/Brad Wilk、Chili PeppersのFlea、Maynard James Keenan、Pete Yorn、Jurassic 5等々、豪華極まりないものになっている。中でもTom Morello/Serj Tankian/Brad Wilk/Fleaという恐るべき布陣によるFunkadelicのカバーは即席バンドとは思えないほど圧巻で、”Bombtrack”を思わせる凄まじいグルーヴには、Rage Against the Machineのファンも体を動かさずにはいられないだろう。アルバム全般としては”企画モノ”という体裁が強いが、他にもBrad Wilk/Fleaのリズムの掛け合いが見事なジャム・セッションや、Tom Morello/Serj Tankian/Pete Yorn/Flea/Brad Wilk/Maynard James KeenanらによるU2の名曲"Where The Streets Have No Name"のカバー、そしてNightwatchmanの未発表曲2曲を含む本作は、Audioslaveファンにとってマストに近いアイテムと言ってもいい。
結果として2004年は、AudioslaveもしくはZack de la Rochaとしてのアルバムの発表はなかったものの、下半期に立て続けに上記2作を迎えられたことは、大きな救いであった。
日本では、もはや年間行事である大晦日の格闘技番組のCMの度に”Guerrilla Radio”が流れているが、既に”Guerrilla Radio”の発表から5年が経過しており、最初にこの曲を耳にした衝撃的な印象は完全に色褪せてしまっていることにふと気が付く。2005年こそは、AudioslaveとZack de la Rochaの両者のアルバム・リリースにより、衝撃的な新曲との出会いを心から願いたいところだ。
(2004年12月29日) |
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