THE BATTLE OF COACHELLA THE BATTLE OF COACHELLA
Rage Against the Machine再結成ライブの行われた、2007年コーチェラ・フェスティバルに潜入してきました。詳細なライブ・レポートは他のメディアでの掲載が予想されますので、当サイトでは、コーチェラに参加した1ファンの視線で、再結成ショウに至るまでの動向をメインに書かせていただきます。どのようにRage Against the Machineがファンに迎えられたか、どれだけファンがRage Against the Machineを待っていたかを、お伝えできれば幸いです。
広大な土地に何万人と生活しているコーチェラのキャンプサイト。
奇麗な芝生とヤシの木が印象的な会場風景。昼間は40℃に達します。
MIKAのショウからレイジを張り込む屈強なファン達。
多数の警官が張り込み、レイジのファンに警戒の目を向けている。
この日だけ馬にまたがったポリスメンが。ありえねー。
モニターに映るアフロ・ザック。
それぞれの7年間の思いを込めてのモッシュ。湯気が凄い。
後ろを見ると、遥か彼方まで人・人・人で埋め尽くされている。
何を思ったか、ショウの最中に火を付け始めるファン達。
ショウ終了後、遥か彼方まで踏まれたペットボトルが転がっている。
ショウが終わり、コーチェラ参加メンバーで記念撮影。
帰り道でのインディオのバスターミナル。蓋を空けてみれば皆レイジのファンだった。
今回のコーチェラは、29日を迎える以前から、Rage Against the Machineのためのフェスだということを予感させている。29日の1日券は発売1時間で完売し、実際に会場に入ってみれば、至るところに「Battle of Coachella」と書かれた公式Tシャツを着ている人を見ることができる。Red Hot Chili PeppersやBjorkのTシャツを着ている人との比率の差は明らかである。

28日のRed Hot Chili Peppersのショウが終了後、キャンプサイトに戻って寝る準備を整えていると、広大なキャンプサイト全土から「Rage!!」コールが連鎖的に湧き上がる。誰が持ち込んだのか分からないホラ貝が吹かれると、その度に「ウォー!!」という奇声がキャンプサイトを一斉に包み込む。まさに「Battle of Coachella」の文字通り、戦闘前夜の士気高揚の儀式のようである。途中までその掛け声のウェーブに参加していたが、深夜3時になっても止む気配がなかったため、休むことにした。2泊目のキャンプになるが、昨晩はこんな状況ではなかった。

朝8時に目を覚ますと、既に隣のテントのアメリカ人達は起きていて、朝から「レイジ! レイジ!! レーイジ!!!!」と互いにコールし合っている。仕度を整え、コンサート会場に入ろうとすると、何とRage Against the MachineのTシャツを着た男達(しかも皆太い)ばかりが行列を作っている。数台のパトカーが止められており、警官が睨みを利かせている。入場の際の持ち物検査も前日より遥かに厳しく、タバコの箱の中身までチェックされるほどであった。会場に入っても前日は白人が客層の大半を占めていたが、今日はマッチョなチカーノや黒人をはじめ、様々な人種が会場を埋め尽くしている。爽やかな笑顔で溢れていた昨日までの安全で平和なフェスとは異なり、明らかに戦闘態勢に入っている険しい表情が目に付く。今日は何かが起こるに違いない。

本日のショウが開始され、メインステージの一発目はUK若手ポップ・ミュージシャンのMIKAだったが、アリーナ最前エリアに行ってみると、何とRage Against the MachineのTシャツを着た人が大勢いる。驚くべきことに、35℃を越す炎天下の中、10時間後のレイジのショウまで場所取りをしているのだ。MIKAのキャッチーなステージングに女性ファンが楽しそうに踊っている横で、Rage Against the MachineのTシャツを着たマッチョな黒人が耳栓をしてMIKAを睨んでいる光景は異様としか言いようがない。一方で、心あるRage Against the Machineファンが、MIKAのポップ・ソングに対し、不器用なヘッドバンキングで応えている姿も微笑ましかった。

私がメインステージでの場所確保に動いたのは、Rage Against the Machine出演の4つ前のWilly Nelsonからだった。既に周りにはRage Against the Machineのファンしかいない。次のCrowded Houseでは、ブーイングと「Rage」コールと「Fuck You!」の罵声が飛び交う始末である。Manu Chao出演の時には既に最前エリアは寿司詰め状態で、Rage Against the Machineのショウが始まる前なのにも関わらず、何人もの人がセキュリティに救いを求めてリタイアしていくという、凄まじい修羅場であった。

さて、いよいよManu Chaoの時間が終り、後はRage Against the Machineの出番を待つのみである。コーチェラ会場中が絶叫と「We Want Rage!!」のコールで包まれている。
私は最前ブロックは避け、ひとつ後ろのブロックにいたが、後方をジャンプして見てみると、既にPAの遥か彼方まで人で埋め尽くされている。

ステージにはゲバラの肖像が設置され、背景には大きな★マークが掲げられる。7年前と変わらない簡素なステージを見るだけで、Rage Against the Machine再結成へのこれまでの熱い思いが込み上げて来る。

いよいよ照明が消え、もはや会場中が言葉にならない悲鳴の飛び交うパニック状態に。そこに映し出されたモニターには、何とバックステージで待機中のアフロ姿Zack De La Rochaの横顔が。そして大量のカメラのフラッシュが焚かれるステージにメンバー4人が登場。尋常ではなくなっている歓声の大きさで、Zack De La Rochaの声が聞こえるか不安であったが、以前と変わらず通る声で彼はこの言葉を放った。

We are Rage Against the Machine, from Los Angeles, California!!


もはやこれだけで涙してしまったが、そんな余韻は全く許さず、一気に”Testify”を投入。日本のショウでは考えられないほどのオーディエンスの体重と圧力で、曲を聞くどころか、立っているだけでもやっとである。続いて間髪入れずに” Bulls on Parade”に突入。このリフを聞いて冷静でいられる人などもう誰も残っていない。周囲の小柄な人や同行仲間が次々とリタイヤして行く。普段大好きな” Bulls on Parade”で、命の危険すら感じるようになるという皮肉。もはや曲を聞いていられる状況ではない。ここは戦場だ。”Bullet in the Head”の最中で何とか背後の人の流れを読み、後方に15mほど退くと、ようやくジャンプができるくらいのスペースを確保し、やっと演奏を楽しむことができる。

序盤は7年間のブランクもあってか、Zack De La Rochaのライムもややもたつき気味で、演奏音量もやや小さく、Tom Morelloのギター・ワークも少し粗いという印象はあったが、個々のパートのミスもRage Against the Machineの音塊としてひとつになってしまえば、観客をモッシュさせるには十分過ぎる出来だった。

相変わらず下から響く音のおかげで地面が熱い。ジャンプをしなければ足の裏が焼けてしまう。特に”Know Your Enemy”では、曲最後の溜めからのリフのスタートで、一斉に地面が揺れるほどに観客全員がジャンプを開始する。遥か後方まで、照明に照らされた手と髪の毛が上下に揺れている様子は、ビデオで見たレディング・フェスの光景とまるで同じである。驚かされるのは、曲を重ねて行くに比例して、客の暴れ方も増大していくのだ。

セットリストは1st、2nd、3rdから均等に代表曲をピックアップしている感じであったが、何と”Renegades of Funk”という貴重な選曲を楽しむことができた。おそらく、この後に出演が控えているヒップホップ・フェス”Rock the Bells”の客層を想定しての予習選曲なのかもしれない。率直なところ、スタジオ版に比べてファンキーさには欠けていたが、珍しいこの曲の披露には、ファンもさすがにモッシュを止めて腰を振りながら聞き入っている様子であった。

しかし何といってもこのショウのハイライトとなったのは”Wake Up”である。ギター1本で再現するには難しいイントロであるが、溜めの後の「Come On!」の合図でリフが発射された後で観客も一気に大暴れ。終盤に演奏が控えめになり、その間にZack De La Rochaが3mほどあるセットの高台に上る。淡々と進行していたステージングだったが、彼がはじめてスピーチを開始した。

"A good friend of ours said that if the same laws were applied to U.S. Presidents as were applied to the Nazi's after World War II, then every single one of 'em, every last rich white one of 'em from Truman on would have been hung to death, and shot. And this current administration is no exception. They should be hung, and tried, and shot. As any war criminal should be. But the challenges that we face, they go way beyond administrations. Way beyond elections. Way Beyond every four years of pulling levers. Way beyond that, because this whole rotten system has become so vicious and cruel, that in order to sustain itself, it needs to destroy entire countries, and profit from their reconstruction, in order to survive, and that's not a system that changes every four years, it's a system that we have to break down generation after generation after generation after generation after generation."

スピーチ終了後、そのまま「Wake Up!!」と繰り返されるZack De La Rochaの絶叫と共に、コーチェラは狂乱の渦と化した。

アンコールの”Freedom”で周りを見渡してみれば、くしゃくしゃの顔で泣いているアジア人。白い歯をむき出して笑っている黒人。歌詞を口ずさんで怒りの表情を浮かべるチカーノ。純粋に音を楽しんでいる白人。様々な人種が、思い思いの解釈でRage Against the Machineを聞きながらも、モッシュという行為でひとつになっている。こんなショウができるのはRage Against the Machineしかいない。

--Set list--
Testify
Bulls on Parade
People Of The Sun
Bombtrack (edited)
Bullet in the Head
Know Your Enemy
Down Rodeo
Guerilla Radio
Renegades of Funk
Calm Like a Bomb
Sleep Now in the Fire
Wake Up
------
Freedom
Killing in the Name


最後の曲”Killing in the Name”が終わると、メンバー4人が肩を組み、ステージを後にした。照明が灯され、もうアンコールがないと分かっているのに、なかなか観客は会場を去ろうとはしなかった。
私達がコーチェラ会場を後にする時、「Cheese!」と言わずに「Rage!」を合図に記念写真を撮っている人を見つけた。また、入口近くまで踏みくちゃにされたペットボトルが何本も転がっているのに驚かされる。ステージから200mは離れているであろうこの距離まで、客がRage Against the Machineを見ていた証拠だ。昨日のRed Hot Chili Peppersではこんなことはなかった。
キャンプサイトに戻り、再び寝る準備をする。あんなにも肉体的にハードなショウを体験したというのに、「Rage!」コールが止むことはない。そのまま朝5時まで声が消えることはなかった。

翌朝、キャンプサイトを後にし、インディオのバス・ターミナルからLA行きのバスに乗ると、後方座席から少年が「I Saw Rage!!」と雄叫びを上げる。そのまま車内中が「Rage!」コールに溢れ返り、続けて”Killing in the Name”の歌詞で包まれる。眠れないほどの大騒ぎのままLAに到着した。
Rage Against the Machine側は、今年の再結成は一時企画のものと考えているのかどうかはまだ分からない。しかしバスの中のファンは、確実に次のライヴをイメージして車内で無邪気にはしゃいでいた。

Zack De La Rochaは、ソロ・アルバム制作への専念を表明して、2000年にRage Against the Machineを脱退したものの、未だにそのソロ・アルバムは発表されることはない。しかし、再結成のショウを目の当たりにすれば、それを責める人はいないだろう。最終的にZack De La Rochaは、Rage Against the Machine以上の作品を生み出すことができなかった。Rage Against the Machineはそれだけ偉大であるという証拠だ。

ファンは7年間、Zack De La Rochaではなく、Rage Against the Machineを待っていた。

(2007年5月6日)

> 4/28 Nightwatchmanライブ・レポート
TOP | What's New | Biography | Discography | Download | Others | Contact Me | BBS | Links