デビュー当初から彼等が標榜していた「インテレクチュアル・スラッシュ」。知性の欠落を指摘されることの多かったスラッシュ・メタルに、複雑な曲展開とテクニカルな演奏により 知性を感じさせるサウンドを取り込み、かつアグレッションと融合させた彼等の4作目である。
そのアウフヘーベンの手法こそファンがバンドに望む主要なファクターであったのだが、メガデスはここで大胆にも豊潤なメロディーを注入し、「インテレクチュアル・スラッシュ」の型をかろうじて保ちながらも、より普遍性に富んだ正統派ヘヴィー・メタルに接近したのだ。マーティー・フリードマンの加入がもたらしたモノとは、正にこのメロディーであった。 シュラプネル出身のマーティーは、氾濫するテクニカル・ギタリストの中にあって 当初から一風変わったエキゾチックなメロディーを奏でる個性派であったが、 その特性はメガデスのこのアルバムでも如何無く発揮されている。 マーティーがバンドにもたらしたモノがもう一つあるとすれば、 それはムステインにリード・ギタリストとしての自我を思い出させたことだろう。 それはアルバムの@Holy wars...The punishment due、AHanger 18を聴けば明らかである。 マーティーの摩訶不思議なリードに負けじとペンタトニック主体で熱いソロの応酬をするムステイン。そこにはメタリカの創世期にリードを弾いていた頃の気概とプライドが感じられる。
閑話休題。当時加入の噂があったジェフ・ウォーターズは人間関係を理由にムステインの誘いを蹴っているが、この話は実に興味深い。ジェフ率いるアナイアレイターは初期メガデスの流れを汲む、 いわゆる「インテレクチュアル・スラッシュ」の後継者だが、 練り込んだ重厚かつ複雑なリフ・ワークと計算され尽くした リード・プレイは唯一無二の個性と輝きを放っており、 その巧者ぶりにはヘヴィー・メタルファンの信望も厚い。 歴史に仮定は禁物とはいうが、もし当時マーティーではなくジェフが メガデスに加入していたら一体どうなったのだろうか。 リズム・プレイとソングライティングに若干の弱点をもっていたマーティーに対し、 その両方で豊かな才を発揮するジェフが加入していたならば、 大衆性の欠如から商業的成功は望めなかったであろうが、 凄まじい緊張感に満ちたメタルのマスターピースが産み落とされた可能性がある。 ヘヴィー・メタル界屈指のリフ・マスターであるムステインとジェフのタッグは幻に終わったが、 実際のところこの「RUST IN PEASE」アルバムは そんな事を感じさせないほどの緊張感に満ちた名盤である。
ところでマーティーと共にバンドに加入した、ドラマー:ニック・メンザについても語らねばならない。 確かな技術に裏打ちされた手数の多いドラミングと特にライヴにおいて顕著になる 圧倒的な存在感はそれまでメガデスに在籍していたドラマーと違い、 メガデスをムステインとエレフソンの単なる「ユニット」から4人のメンバーからなる「バンド」へと 変態させるほどの力を放っていたのだ。 またAHanger 18の基本的コンセプトはニックが構築したと言われているが、 メガデス史上Wデイヴ以外のメンバーが楽曲に根幹から関わったのはこれが初である。 ここにWデイヴが確信的に他メンバーに信頼を寄せ、 「バンド」を形成していこうとしたポジティヴな思考を読み取ることができる。
最後にこの名盤の聴き所を簡潔に付しておく。メガデスの核はあくまでもムステインであり、そのムステインの創るリフである。 このアルバムにはそんなムステインの複雑精緻なリフ・ワークの妙と シニカルな歌詞の世界観がぎっしりと敷き詰められている。 その素材を彩る新加入メンバー:マーティー&ニックの絶妙なる味付けに舌鼓を打ち、 この贅沢なフルコースを何度でもおかわりして堪能していただきたい。 この「インテレクチュアル・スラッシュ」メタルは是非インテレクチュアルな貴方に聴いて欲しい。

※この文章は3年前に他の媒体用にChickが書き下ろしたもので、2002年にメガデスはデイヴ・ムステインの腕の故障が原因で解散しております。

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