「ハード・ロック黄金時代」といわれる60年代後半から70年代前半のアーティストには今日のような優れた録音技術がないかわりに優れた個性と表現力があった。そのような時代の中でさらに革新的であったレコードが「Led ZeppelinT」である。 
このアルバムの発表はロックの歴史において革命であったと伝えられる。ではロックの革命とはいったい何なのか。たとえばSex Pistolsのパンクが有名である。しかし「ロックンロールは死んだ」とまでいって過去のロックを全否定したジョニ−・ロットンだったが、その起こした革命とは、伝統的なスリーコードのロックンロールにかき鳴らしのギターサウンドをのせた事だけであり、自分の音楽的な才能のなさに対する逆ギレとも受け入れられるものだった。確かにロックのもつファッション的側面からすれば、彼らの挑発的なその姿勢や服装も「ロックの革命」と言えるのかもしれない。しかしそうなればもはや彼らは「ミュージシャン」ではない。彼らには「たかがロックだろ?」という音楽に対する甘えが見える時点で、ロックをひとつの音楽として見ていない気がする。「ロックなんだから適当にぶちかませばいいんだよ。」という自らの退廃的スタイル確立のために、ロック・ミュージックを利用したパンクの考えこそが、後のロックの音楽性自体を退化させ、ファッションとのタイアップに走った80's ニューウェーヴ・ロックを生んでしまったのではないだろうか。パンク・サイドから「ツェッペリンはロックという音楽を難解で高尚なものにした」と批判をされようが、Led Zeppelinというバンドは本能のままに楽しい音を出していたに過ぎない。Sex PistolsとLed Zeppelinのレコードのどちらが様式化された音楽かなどと改めて言うまでもなく、感情に直結したLed Zeppelinの音楽にはどれひとつとして同じ曲が存在せず、さらに同じ曲であってもその日のライブのテンションによりカラーをガラっと変えてしまう。Led ZeppelinにはBeatlesのようなLove & Peaceの主張もなければ、Stonesのようなスキャンダラスなゴシップネタがあったわけでもない。音楽だけの魅力で何百万枚もレコードを売ったのは、Led Zeppelinが初めてだった。Led Zeppelinの起こした革命とは、ネガティヴな若者の不満の代弁者になることではなく、ミュージシャンとしてそれまでのロックという音楽の枠を突き破ったことにあり、世界中の人々はただ単に彼らのレコードが良いから買ったのである。
さて前置きが長くなったが、そのLed Zeppelinの革命とはどのようなものであったのかを、次は具体的に音楽性を見て考えてみたい。それ以前のハード・ロック・バンドには何かしらの欠点があった。例えばCreamやYardbirdsは、ライヴでは体育会系ともいえる演奏力の競争もしくは発表会や、自慰的なギター・ソロ・タイムに陥る傾向があるものの、スタジオ・テイクでは逆に楽曲を重視しすぎるあまりに各々の演奏が消極的になり、その結果グルーヴ感に物足りなさを残してしまう感があった。60年代後半には、ライブでは非常に豪快なギターを鳴らしてくれるバンドであっても、スタジオアルバムを聞いてみたらただのポップスというバンドが多いように見受けられる。つまり個性あふれる素晴らしい演奏と素晴らしい楽曲の両立というのは非常に難しい問題なのである。また、アート・ロックをハード・ロックに導入することで、あくまで楽曲を重視しようとしたバンドにVanilla Fudgeなどがいたが、その華やか過ぎるメロディーと強烈なグルーヴを持つリズムとの調和が難しく、その両要素は全く別個のものとなってしまっている印象を受ける(現にVanilla Fudgeはメロディー隊とリズム隊の対立という形で解散を向かえている)。しかしLed Zeppelinというバンドはこれらの問題点をなんとデビューアルバムの1曲目で全て解決してしまっているのである。この曲が有名な「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」である。
確かに演奏力の誇示や自慰的なジャムを行う傾向はギタリストとしてのジミー・ペイジを含め、,メンバー全員にあった。しかしプロデューサーとしてのジミー・ペイジはその演奏力を聴かせようとしたのではなく、あくまで曲を聴かせようとした。そこで彼の優れたところは、楽曲の完成度を高めるためには演奏の暴走は控えさせるという狭い考えを無視し、「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ」のように、逆にフルに個性の出た演奏を楽曲の魅力の一部分としてとりこんでしまった点である。Led Zeppelinというバンドはいわば凄まじいエネルギーを発する個性の集合体である。このバンドはロバート・プラントの力強いハイ・トーン・ボーカルや,ジョン・ボーナムのパワフルかつ弾力性のあるドラムのように、彼ら以外には決して真似のできない個性を持っていた。つまり、この唯一無二の個性に恵まれたメンバー達の暴走を放任し、巧く放し飼いにしたことにより、ハード・ロックやブルース・ロックという範疇ではくくることのできない独自の音楽が作り出されたのである。それが時代の流れにより風化することがない理由なのであり、Iron ButterflyがLed Zeppelinのように後のロック・シーンに影響を残すことが出来なかった理由は、反対に乏しい個性の発表会をしただけだからである。

60年代後半から70年代初頭には,当時混迷していたブルース・ロックから抜け出そうと、様々なミュージシャンが様々なアプローチで試みたため、音楽への自由な発想の出来る空気があった。ロック・ミュージシャンがミュージシャンであり得たことが、黄金時代とよばれる理由だろう。懐古的かもしれないが、まさにLed Zeppelinとはこの時代のようなロック・シーンの隆盛を、我々20代の世代にもリアルタイムで体験したいという気にさせてくれる存在である。しかし私の言っているロック・シーンの再燃とは、Black CrowesやStereophonicsといった60年代テイストのバンドの活躍を指しているのではない。本当に懐古的であるならば、Led Zeppelinのように既存のロックの枠を突き破ってみるアプローチを真似てみてはどうだろうか。


2003/06/07
※この文章は、1999年に別の媒体用に書き下ろしたものに後から手を加えたものです。


How The West Was Won
2003年6月11日国内盤発売
Led Zeppelin初期ベスト盤的な選曲で、音質も今風にヘヴィにアレンジ。最近のヘヴィロック・ファンにも受け入れやすいCDになっているのでぜひ聴いてほしい1枚だ。海外では日本より先行で発売されており、DVDとともに米ビルボードチャート(14日付)で初登場1位を記録している。これまで同チャートでは7枚のアルバムが1位を獲得しているが、初登場1位はキャリア史上初めて。結成35年目で新たな伝説を作った。

CD1 : LA Drone / Immigrant Song / Heartbreaker /Black Dog / Over The Hill And Far Away / Since I've Been Loving You / Stairway To Heaven / Going To California / That's The Way / Bron-Yr-Aur Stomp
CD2 : Dazed And Confused / What Is And What Should Never Be / Dancing Days / Moby Dick
CD3 : Whole Lotta Love / Rock And Roll / The Ocean / Bring It On Home


LED ZEPPELIN・・・66年6月にロックバンド「ヤードバーズ」に加入したジミ―・ペイジが、ボーカルのロバート・プラント、ベースのジョン・ポール・ジョーンズ、ドラムのジョン・ボーナムを誘い、68年10月に「レッド・ツェッペリン」として活動開始たのがはじまり。アルバム「レッド・ツェッペリン2」が全米1位を記録すると、世界的な人気を獲得。80年9月にボーナムが死去したためバンド解散。全世界で10億枚以上の総セールス記録している。この記録はビートルズに次いで世界第2位。

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